青春18きっぷで行く信越・北陸本線一人旅 3日目(2)写真には残らない各駅停車の旅の魅力。(浜松駅で途中下車)
名古屋でお店が開くまで時間をつぶすんだったら、もう少し先に進んでお昼ごはんにしたほうがいいかもしれないと思い、名古屋はちょっとだけ地下街を歩いただけで東京に向けて再び進むことにする。
名古屋駅から新幹線に乗れば1時間40分ほどで東京に着いてしまう。お昼ごはんは東京で食べることができる。でも、各駅停車の旅は、車窓の風景も楽しめるし、私は人の流れを観察するのが好きなので各駅停車の旅を飽きることはないみたい。車窓の風景を見ながら考え事をしたり、本を読んだり、意外と各駅停車の旅は心地よい時間を与えてくれる。
10:02発豊橋行き快速列車に乗ることにする。名古屋での滞在時間はわずか16分ほど。
10時過ぎの列車とあって、乗客はまばらに乗っている程度。列車に乗って座席に座ると、さっそく浜松出身の友人にメールを出す。お昼ごはんを食べるのにお勧めのお店を聞くのには、地元出身の人に聞くのが一番いい。だけど、平日の日中に浜松駅までに返事が来るだろうか。
安城駅には「南吉が青春を過ごしたまち 安城」と看板があるけど、新美南吉って名前は聞いたことがあるけど、どんな人だっけ?と考えるけど思い出せない。どうしても思い出せないので調べて見ると「ごんぎつね」などの作品を書いた児童文学作家だったのね。だけど、新美南吉は愛知県半田市出身と書いてあるけど、安城とはどのような縁があるんだろう?
ずっと曇り空だった日本海沿いの町と違って、2015年3月5日の太平洋側の気候は穏やかに晴れており、とても温かい。のどかな車窓の風景が楽しい。
この日の快速列車は三ヶ根駅に臨時停車。ドアは開かずに乗客の乗降はできず、三ヶ根駅そばの踏切が壊れており、修理のための作業員が降りるだけのための停車。
三ヶ根駅で臨時停車して、故障した踏切を徐行運転した関係で、豊橋駅での乗り継ぎ時間がとても短くなってしまう。10:56到着の予定が6分遅れたために、乗り継ぎの豊橋発掛川行きの普通列車は11:03発なので、ほとんど乗り継ぎ時間がない。
東海道線の車両はロングシートの車両。静岡県に入り、静岡県西部では浜松が中核都市であるようで、浜松に近づくにつれて乗客が増えてくる。平日の11時台の車両は、大学生くらいの年齢の若い女子が多い。この日は温かく、女子の服装も春らしい服装で、太平洋側は日本海側よりも早く春が近づいているんだなぁと感じる。浜名湖を過ぎ、新幹線が見えてきた。
普通列車は11:38浜松駅に到着。電車は掛川行きだけど、浜松駅で途中下車。飽きたら新幹線にいつでも乗れると思って旅をしているけど、車窓からの風景だけではなく、地域の中でどこが大きな町なのか、乗客の服装、話されている方言などを観察するのがおもしろくて、写真に撮ることはできないけれど、それがものすごく楽しい。それに、飛行機と違って地上の風景が見られるので、風景を見ながらぼーっと考え事をする時間も贅沢な時間。
お昼前の11:38に浜松駅に到着してなにをするかと言えば、目的は1つしかない。言うまでもないことだけど、今日のお昼ごはんは浜松で食べることにする。浜松駅で下車するのも初めてだし、当然浜松のうなぎ屋で鰻を食べたことがない。そう、浜松でうなぎを食べるのが目的。
浜松出身の友人からメールの返信が来ており、「あつみ」は席数が少ないので混んでいる可能性があり、浜松駅南口のすぐに駅前にある「八百徳」というお店も候補として教えてくれる。
それと、もうひとつの候補はホテルの2階にあり、ちょっとわかりづらい場所にある「藤田」というお店。たぶん、セブン・イレブンの2階にある「藤田」は、教えてもらわなければ絶対に気がつかないなぁ。
今日は浜松の友人が推奨するホテルの2階にある「藤田」にしてみる。
お店の入口は、うなぎが焼かれているのが見えるようになっている。
ちゃんとしたうなぎ屋さんは待つのが当たり前なので、のんびりした気分で待つ。お昼時で一定の準備がされていたのか、思っていたよりも早くて20分くらいで鰻が運ばれてくる。注文したのは、青春18きっぷで敦賀から東京まで2370円で行く貧乏旅行なのに、せっかく浜松まで来たのだから美味しいうなぎを食べようと3500円の鰻重。
浜松で食べる鰻は、関東風に一度蒸し上げられている。たれも濃いめだけど、甘すぎず好きな味かも。
当初は名古屋でお昼ごはんを食べようと思っていたけど、なにしろ今回の旅行は事前になにも決めていなので、思いつきで鰻を食べられて正解だったかも。
12:29発興津行きの普通列車に乗るけど、「興津」ってどこなんだろう?
浜松を出発すると磐田、袋井、掛川を通過し、大井川を渡る。大井川を渡ると静岡駅に向かって徐々に乗客が増えてくる。
静岡が中心都市であり、乗客のほとんどは静岡駅で降りる。静岡県内のJR東海管轄の東海道線は熱海行きの20分に1本の頻度で運行されているので、どこで途中下車しても次の列車がしばらく来ないということがないので静岡駅で降りてもいいけど、駿府城まで歩くのも遠いし、ごはんは食べたばかりなので「静岡おでん」を食べるにはお腹いっぱいなので、10分後に来る熱海行きに乗り継ぐことにする。
13:54発熱海行きの普通列車は3両編成。大きな町の静岡駅で乗った乗客は清水駅あたりで降りる人が多く、清水を過ぎると列車は空いてくる。
東海道線は由比駅あたりで海岸線を走り、車窓から太平洋が見える。高速道路なのが残念だけど。
富士川を渡る。今日は晴れていて天気はいいけれど、富士山は見えないみたい。
15:10熱海駅に到着。熱海行きの普通列車は沼津駅を過ぎたあたりから今までの傾向とは異なり、県境を越えて東京方面に向かう乗客が増えてくる。さらに三島駅を過ぎると3両編成の列車は座れない乗客も出てくる。三島から新幹線を利用せずに東海道線を乗り継いで東京方面に向かう乗客も多い。
熱海駅15:18発東京行きの列車に乗り込む。入線してきた列車は東海道線カラーのE217系電車なんて、珍しい車両。東京行きの列車は15両編成。横浜市の戸塚にある大学のキャンパスに東海道線で通っていたので、東海道線が15両編成であることは知っているんだけど、今回の旅行は北陸では2両編成の列車で旅をしていたので、さすが東京行きは長いなぁと感じる。
せっかくなのでセミ・クロスシートの座席に座る。ちなみに本来は横須賀線の車両であるE217系電車に東海道線で乗れるのはとても貴重な体験。
小田原駅に到着し、小田急線の車両が見える。戸塚駅あたりからは通い慣れた風景だけど、さすがに大学に通っていたのは青春18きっぷの旅行と同じく21年前くらいなので、懐かしいなぁと思う風景と、新しい風景が両方ある。
そして、いよいよ多摩川を渡り、東京都に入り、品川プリンスホテルが見えてきた。
17:06東京駅に到着。朝7:17に敦賀を出て、東京駅まで10時間。飽きたらいつでも新幹線に乗るつもりだったけど、各駅停車の旅はおもしろかった。素通りしてしまう町も、各駅停車の旅だからこそ雰囲気を感じることができる。車窓から見る風景も楽しかった。この人は、どこへ向かっているんだろう?何をしに移動しているのかなぁ?乗客を観察するのが楽しかった。風景を見ながらぼーっと考え事をする時間も楽しかった。本を読んだり、時にうたた寝をするのも心地よかった。
だけど、今回の旅行、「旅行記」にするのが難しい。車窓から眺める風景はいいなぁと思ってからカメラを構えたのでは手遅れになり写真に残せていない風景も沢山ある。乗っている乗客の観察だって、さすがに見ず知らずの乗客を写真には残せない。一番楽しいと感じたことは、写真を撮ることができない場面や、表現できない部分にこそ、各駅停車の旅の楽しさってあるような気がする。うーん、「旅行記」として、この楽しさを伝えるのは本当に難しい。
「まだ知らないどこか」は、遠く海外にあるとは限らない。飛行機や新幹線で通り過ぎてしまう町にこそ、新しい発見がある。今回の旅行を通じて、まだ私は日本のことを知らないことを実感する。滋賀県を通過している際に感じたことは、私は関西圏の文化を知らない。京都、奈良、大阪を表面的な観光はしているけれど、京都は学会などで訪れることがあるけれど、大阪や神戸の町歩きをしていない。高野山や吉野山のある奈良・和歌山県方面なんて、行ったことがない。近いからいつでもいけると思っていると、なかなか行けないものだ。
普段は通り過ぎてしまっている場所にこそ、新しい発見がある。21年ぶりの「青春18きっぷ」の旅は、私が旅に出始めたころの旅の楽しみ方を思い出させてくれた。たまには、目的地に一直線の旅ではなく、ゆっくり目的地を結ぶ間の移動を楽しむ旅というのもおもしろいじゃない。また、青春18きっぷでのんびり旅をするのもいいかもしれない。東京駅から中央快速線高尾駅行きに乗って、旅を振り返りながら家路につく。(青春18きっぷで行く信越・北陸本線一人旅おしまい)
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