
お昼ごはんを食べて、やっぱり町の雰囲気を味わうためには歩くのが一番だし、途中で近江町市場をのぞいてみようと思っていたので、雨の中を歩く。アーケードで屋根がある近江町市場だったら、雨でも楽しめるし。それに、私は市場をみつけたら、市場を歩くのがやっぱり好き。

このあたりで水揚げされる石川県産のズワイガニは「加能カニ」というんだ。福井の「越前ガニ」はわかるけど「加能カニ」はあまり聞き慣れない感じ。写真では左手前に見切れてしまっているけど、新潟産のものは産地呼称がないらしく「ずわいがに」として売られている。

「のどぐろ」の一夜干しなんて、美味しいだろうなぁ。青春18きっぷの各駅停車の旅行じゃなかったら絶対に買っていきたいけど、宅急便で送ると送料がかかるし、ずっとこれを手に持っての旅行は面倒なので、美味しそうだけど今回は断念。

近江町市場の八百屋さんのディスプレイの仕方がなかなか美しい。加賀野菜が売られたりして、八百屋さんもけっこうおもしろい。地方の市場やスーパーマーケットをのぞいて、地方独自のものを見つけるのが大好き。

ホタルイカの姿漬けなんて、ごはんにのせて食べたら幸せだろうなぁ。甘エビの塩辛も幸せだろうなぁ。青春18きっぷの旅じゃなくて、北陸新幹線の旅行だったら2時間半で東京に着けるのでいっぱい買ってしまいそう。

「のどぐろ」などの高級魚だけではなく普通に売られている魚を見るのが好き。

これ、全部で1000円なのかなぁ?

「この場で食べれます」。ちょっと「ら抜き」言葉が気になるけど。観光客目当てに、その場でボタンエビを1匹で購入し、箸やしょうゆが準備されているお店もある。近江町市場、もっと観光地化されているかと思ったけど、なかなかおもしろかったなぁ。やっぱり市場は大好き。

近江町市場を出て金沢駅までは、歩いてもすぐなんだけど、バスに乗ろうかと悩む。時間的には、急いでも乗る電車の時刻は変わりがないから、ここまで歩いたんだから最後まで歩こう。

北陸新幹線開業日、2015年3月14日の金沢駅周辺はそんなにお祭りのように混むのかなぁ?

金沢駅に到着。駅の風格といい、北陸の中心都市であることを感じる。

「新幹線が春をつれて、やってくる。」

雨に濡れて冷えた体を温めるために温泉に向かうことにする。13:00福井行き普通列車に乗ることにする。

2015年3月4日は3学期の期末試験なのかなぁ?福井行きの2両編成の普通列車には高校生だらけ。なんとか座席に座ることができたけど・・・。石川県の地域経済圏の中心都市は金沢なので、金沢で乗った乗客は小松あたりでだいぶ降りるけど、それでもまだ多い。

13:44加賀温泉駅で下車。この駅で下車する高校生も多く、この駅で車内はがらがらになる。加賀温泉駅より先は福井県に入ってしまうので高校生は県を超えないから、やっぱり県をまたぐ区間は空いている。

JRの駅からバスで行けそうな片山津温泉、山代温泉、山中温泉、芦原温泉の4つの温泉を検討した結果、山中温泉に行ってみることにする。

加賀温泉駅で下車して路線バスで山中温泉に向かう。路線バスは山代温泉を経由して山中温泉に向かう。次のバスは14:05発。ふと、2番乗り場に「山代温泉・山中温泉」と同じバス停から渋谷・八王子行きのバスが出ているのが不思議な感じ。うーん、これから山中温泉に入って、加賀温泉駅から21:30のバスに乗れば翌朝には八王子に着いてしまうのか。この時間から、東京に青春18きっぷで帰るには、どうしてもどこかで1泊していく必要があるから、このまま夜行バスに乗って八王子に向かうほうが宿泊料を考えたら安いかも。八王子まで行けば、今回の旅のスタート地点の「高麗川駅」へも八高線で戻れるし。

加賀温泉駅は賑わっていて、たくさんの旅館の送迎バスが特急電車から降りてくるお客さんを待っている。そして、特急電車が停車すると宿泊客が大勢降りてくる。改札口前では旅館の旗を持った出迎えがあり、それぞれのバスに案内されている。大型の旅館で温泉を楽しむお客さんが平日にこんなにいるのかとびっくりする。

次にここに来るときには、一緒に温泉旅行をする「連れ」と一緒の私を出迎えてくれる旅館の送迎バスに乗るぞ。残念ながら、今日は私が一人で乗るのは路線バス。だけど、このバスで大切なことにはっと気がつかされることになる。

それは、バスは加賀温泉駅が始発なのに、なぜ整理券の番号が5番なのかということ。このことを私の固定観念は「おかしい」と違和感を感じてしまう。

なぜ違和感を感じるかというと、私が住む埼玉県の路線バスでは始発が0番から番号が始まるから。私の中で、バスの整理券は「券なし」か「1番」から始まるものであるという固定観念が私の中に根付いてしまっている。だからこそ「違和感」を感じるわけだけど、別に5番から始まっても不都合はない。だって、バスを降りるときに自分の持っている整理券と表示されている料金をみて運賃を支払うわけだから、整理券の番号が何番から始まっても困ることはない。そう考えると、固定観念に縛られて「違和感」を感じる私がおかしい。たかがバスの整理券だけど、ちょっと「おもしろいなぁ」という気持ちになる。

加賀温泉駅前で旅館の送迎バスをたくさん見たけれど、山代温泉に巨大な温泉旅館があってびっくりする。私が「まだ知らない」だけで、加賀温泉郷の山代温泉・山中温泉は有名な温泉街なんだ。金沢で大雨に遭遇しなければ温泉に入ることもなかったかもしれないし、整理券の固定観念に気がつくこともなかったかもしれないなぁ。

バスは終点山中温泉ターミナルに到着する。帰りのバスの時刻を確認して、日帰り入浴施設を目指す。

山中温泉のほうが山代温泉よりも巨大な温泉旅館が目立たず、静かな雰囲気。日帰り温泉施設を目指して歩く。

日帰り温泉施設「菊の湯」の建物が見えてきた。

あれ?のれんを見ると女湯?男湯はどこにあるの?

少し離れた建物が男湯。以前に山陰をドライブ旅行したことがあり、関東圏では日帰り入浴施設には石けんはたいてい常備されているけれど、関西圏では銭湯のようにせっけんやシャンプーは用意されていないことを知っていたので、番台で聞いてみるとやっぱり石けん等は設置されていないとのことで、タオルと小さなボディーソープを購入。たしか、和倉温泉総湯はせっけんとシャンプーは設置されていたので、このあたりが東西の風呂文化の境目なのかもしれないなぁ。けっこう熱めのお湯で、雨で濡れて冷えた身体が暖まる。

火照った身体には、外の空気が心地よい。ここで金沢の和菓子店「森八」で買ったおやつを食べることにする。

「ふくさ」に「宝達」、そしてさくら餅にどら焼き。美味しそうだと感じたお菓子を感性のままに買ってみたけど、買いすぎ?

「ふくさ」というお菓子はふわふわの皮にあんこが包まれていて美味しいかも。

そして「宝達」はもちもちの皮が美味しい。これはおみやげにちょうどいい。バラだけではなく買っておけば良かったなぁ。まぁ、おみやげを買うべき人もいないから、別にいいけど。

山中温泉での滞在時間は約1時間くらい。お風呂に入ってちょっとくつろぐくらいなら、ちょうどいい時間。15:45発のバスに乗るために、山中温泉バスターミナルに向かう。バスターミナルの横にはスーパーマーケット「マルエー」があって、のぞいてみると、テレビで紹介されてから話題の石川県名物「とり野菜味噌」が売られている。

そして、地元で作られているサイダー「柚子の乙女」を飲む。スーパーで冷蔵庫に入って売られていないのが残念だけど。

山中温泉バスターミナルでバスを待つと加賀温泉駅行きのバスがやってくる。ここでも、バスの整理券が、さらに私の「固定観念」を崩す衝撃を与えてくれる。どうしても、年齢を重ねると物事を概念で考えがちで、「AだからBである」というルールを自分の中に持ってしまい、それが固定化してしまう。そして、いつのまにか本当にそのルールが正しいのかどうかを疑わなくなってしまう。

バスに乗り、整理券を確かめてみると山中温泉バスターミナルが始発なのに16番。こんなのは行きに5番の整理券をもらっているからたいして驚くことじゃない。

しばらくして、運賃表示を見ると、バスの整理券はさらに私の固定観念にショックを与えてくれる。行きのバスではどんどん整理券の番号が増えていったのに、なんと、帰り道のバスではバスが進むにつれて発券される番号がどんどん若くなっている。
別に整理券の番号がカウントダウンしていっても、よく考えれば問題ない。乗車したバス停の整理券番号に従った料金を支払えばいいわけだから、何番から整理券が始まっても、番号がどんどん若くなっていっても不都合はない。たかがバスの整理券だけど、おもしろいなぁ。このルールは石川県のルールなのかなぁ?北陸のルールなのかなぁ?私が無知なだけど、もっと広くて関西圏全体のルールなのかなぁ?たかが整理券でこんなに考えてしまう私は、まだまだ日本を知らない。

バスが加賀温泉駅のロータリーに入ろうとしているときに、加賀温泉駅の背後には大きな仏像が建っていることに気がつく。加賀温泉駅にいたときには気がつかなかったのに・・・。
「狭い範囲で生きていては見えないものがあるんだよ。一歩引いて全体を見ようとしたときに初めて全体が見えるものだ」と仏像が教えてくれたような気がする。そして、「おまえは固定観念にとらわれて、ほんの小さな範囲を見て全体を知ったつもりになっているんじゃないか?」と仏像に問われているような気がする。バスの整理券の気づきも仏様の仕業なのかもしれないなぁ。
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