2020年3月、春のイタリア・シチリア紀行 2日目(10)シラクーサのギリシア遺跡。
バスはシラクーサのフォロ・シラクサーノ“Parco del Foro Siracusano”に到着する。ここって正式な終点なのかなぁ?帰りのバスもここからの発着なのかなぁ?カターニア行きのバス停があるか探してみるんだけど、よくわからない。大きな町ならバスターミナルがありそうなんだけど、この公園がシラクーサの発着場所なのかなぁ?バス乗り場もよくわからないし、バスは帰り道もきっと空港経由だから、空港からの乗客を避けるために帰りは鉄道にしようかなぁ?
日差しを感じ、ふと、軍服のような制服を着た気象予報士の天気予報が当たっていることに気がつく。たしかに今日の天気は、曇って、雨が降って、そして晴れ。朝は馬鹿にしてすみませんでした。ごめんなさい。
「地球の歩き方南イタリアとマルタ2014-15」のシラクーサのページを見ると、必見スポットはギリシア劇場を含むネオポリス考古学公園。天気も晴れてきたことだし、オープンエアーの公園をのんびり歩くのもいいかも。
正面に見えるのは教会“Chiesa di San Tommaso al Pantheon”で第一次世界大戦における慰霊塔として建てられた。
ネオポリス考古学公園に向かって坂道をあがると近代的な教会“Chiesa Parrocchiale di Santa Rita”がある。シラクーサの教会って、バスの車窓から見たマドンナ・デッレ・ラクリメの聖所記念堂(涙の聖母教会)“Basilica Santuario Madonna delle Lacrime”といい、コンクリート製の近代的な教会をよくみかける。
緩やかな坂道を1キロ以上歩いている気がする。まぁ、私の旅行は歩いて町の雰囲気を感じることが基本なので苦と感じることはないし、今回の「2020春のシチリア紀行」では、誰も歩いていない開放的な風景を一時的にせよマスクをせずに呼吸ができることがむしろ幸せに感じる。
ネオポリス考古学公園の入口で、チケット売り場の表示を見つけたので入場券を買うことにする。
入場券売り場はおみやげもの屋さんの一番奥にあり、おみやげ店に立ち寄らせることを目的としている。おそらく、団体ツアーの観光客がおみやげを買える観光バスの駐車場として作られたんだろうなぁ。
ネオポリス考古学公園まではさらに歩き、途中に入場券売り場をみつけ、わざわざおみやげ店の奥にまで寄り道しなくてもチケットを買えることがわかる。ネオポリス考古学公園の入口は、さらに奥にあるとのことでさらに歩く。
右側に天国の石切場“Latomie del Paradiso”が見えてくる。名前の通り、石切場だったんだと思うけど、けっこう広い面積の窪地なので、多くの石が切り出されたのだろうなぁ。
入口に入ると、ギリシア劇場“Teatro Greco”とディオニュシオスの耳“Orecchio di Dionisio”の分かれ道があり、まずはギリシア劇場を見ることにする。
シラクーサのギリシア劇場は、紀元前5世紀に作られ、紀元前3世紀の改修、そしてローマ時代にも改修されている。古代ギリシアで建造された物としては最大級の規模で、15000人を収容できた。これだけ大きな劇場を持つシラクーサはギリシア時代から都市として発展していたということ。
人工的な洞窟で、水路も見えるので、自然の湧き水ではないだろうなぁ。
劇場の最上部の岩には四角く切り取られた痕跡があり、このあたりも石材として切り出されていたんだろうなぁ。
左奥には、マドンナ・デッレ・ラクリメの聖所記念堂(涙の聖母教会)が見える。そして、右奥には遠くに海が見える。観光客は少なく、私の周囲には誰もいないので、立ち止まって深呼吸してみる。イタリアの空気を思いっ切り吸い込む。そして、暖かい日差しが降り注いでいる。シチリア島はすでに暖かく、春の訪れを感じさせる。普通に美しい風景を見て、日差しを感じ、春を感じられている。実際のオンタイムの旅行中、この場所でのどかな風景を見て、深呼吸をして「シチリア島に旅行に来て良かった」となぜか感じたのを覚えている。もちろん感染対策は怠ることはないけど、緊張感がとれてきて、私の普段の旅行モードになってくる。
入口まで戻り、今度は「ディオニュシオスの耳」へ向かって階段を降りる。
天国の石切場“Latomie del Paradiso”を歩く。ギリシア時代、ローマ時代の建築物に利用される石切場であったとともに、暴君ディオニュシオス1世により捕虜を閉じ込める刑務所として利用された。
かつては、石切場はドームで覆われた巨大な洞窟だったみたいなんだけど、ここでもカターニア観光の時のキーワードである1693年のヴァル・ディ・ノート大地震“Terremoto del Val di Noto del 1693”により、そのドームが崩れ落ちて現在のような平地になった。柱状の岩はそのときの名残りだと言う。
巨大な岩の下を通る。この岩は人工的に置かれたとは思えないので、天井が落ちてきたのかなぁ?
岩盤はけっこうな高さだけど、どこまでが人工的に石切場として切り出されたのかなぁ。
この洞窟はカラヴァッジョにより1608年(地球の歩き方は1603年と表記)に「ディオニュシオスの耳」“Orecchio di Dionisio”と名付けられた洞窟。この場所は捕虜などを収容する刑務所の役割をしており、この洞窟は中の声が響くようになっており、洞窟内の会話が外に響くと言われており、最大16倍も音を増幅させる音響特性がある。
今回のネオポリス考古学公園でのキーワードは「暴君ディオニュシオス」かもしれないなぁ。多くの日本人はシラクーサの暴君が登場する物語を知っている。「シラクス」の町で暴君ディオニス王に捕らえられたメロスは、親友セリヌンティウスを人質として、妹の結婚式を行うために3日間の猶予をもらい、親友のために走ったメロスの物語。そう、太宰治の「走れメロス」はシラクーサの伝承がモデルになっている。
ネオポリス考古学公園を歩いていると、長い人類の歴史の中では、新型コロナウイルス感染症の危機なんて小さなことに思えてくる。始まるがあるものはいつかは終わる。もちろん新型コロナウイルス感染症に対する緊張感はずっと継続するんだけど、屋外にあるこの公園を歩くことで、だいぶ、気持ちがゆったりしてきて、旅を楽しめるようになってきた。
この花はなんだろうなぁ?小さな花の美しさを感じられるようになってきた。
今回の「春のイタリア・シチリア紀行」は、出発前は新型コロナウイルス感染症の影響という今までにない旅をすることの不安感があったんだけど、感染症に最大限に警戒をしながらも、人生の中でたまには「まだ知らない」土地へ行き、日常生活では見逃してしまう小さな草花を美しいと思える心をたまには持つことも必要な気がする。
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