冬の高野山・大阪ひとり旅 1日目(5)高野山の宿坊「福智院」で写経体験。
「角濱ごまとうふ総本舗」でおやつを食べたあとは、今日の宿である「福智院」を目指して歩き始める。
何が書かれているのだろうと興味を持って近づいてみると「頭上注意」と書かれている。
落下する氷の塊の威力は凄まじく、足元を見ると砕け散ったポールの残骸が散らばっている。こんなのが頭に当たったらと考えると恐ろしい。
池とは言っても、この時期は天然のスケートリンクのよう。氷の暑さはどのくらいあるのだろう。
金剛峯寺まで戻って来る。正面の障子が閉められており、すでに一般公開の時間は終わっておりひっそりとしている。
金剛峯寺から歩いて5分くらいで福智院に到着。福智院を選択したのは「ひとり旅プラン」があったことと天然温泉があるから。
さっそく部屋に案内される。平屋建てのお寺の中廊下を歩く。雪で覆われているけれど石が置かれた中庭がある。
私が泊まる「ひとり旅プラン」の部屋は奥まった場所にある20号室。扉には豊臣家の家紋である「五三桐紋」。
「ひとり旅プラン」は四畳半の間なのでこじんまりした部屋だけど、奥まった離れのような雰囲気でなかなかいい。
高野山の宿坊ってどのようなところなんだろう?と思っていたら、修行やお手伝いがあるわけでもなく、朝6時からの「朝の勤行」も参加は自由で、普通の旅館と大きくは変わらない。まぁ、料金も旅館と大きくは変わらないけれど。浴衣も準備されている。
私が宿泊したひとり旅プラン」の部屋はトイレも部屋にある。だけど、2月のこのトイレはものすごく寒い。
旅館に到着すると、私はやることがないこともあって、まずはお茶を入れて茶菓子をいただく。
せっかく天然温泉なので温泉に入りに行くことにする。20号室を出ると障子で仕切られた大部屋が並んでいる。二月ということもあって、大部屋に泊まるお客さんはいない。昔の建物なので、廊下に出ると屋内なのに寒さを感じる。それだけ二月の高野山は寒い。
2月は閑散期ということもあって宿泊しているお客さんは少ないみたい。温泉大浴場は貸切状態でのんびりできる。宿坊って修行的な要素があるのかと思っていたら、制約はなくて普通に旅館に泊まるようにのんびりできる。しかも福智院は温泉のお風呂がいい。
私が興味を持ってしまうのは、ここでも「宝来」と呼ばれる紙飾り。
宿坊の夕食は部屋食。ちなみに福智院ではビールを頼むこともできるけれど、今日は朝からなんちゃって修行の旅なので、アルコールを断つことにする。今日は珍しく旅行に出て丸一日お酒を飲まないで過ごす。もっとも、私は家でビールを飲むことはほとんどないので、お酒がなくても暮らせるので特別なことではないけれど。3つのお膳に並べられた料理は肉や魚を使わない精進料理。
野菜の天ぷらや胡麻豆腐。そして、湯葉。汁物も味を楽しめる味付けになっている。
高野豆腐に炊き合わせなどの料理が並んでいる。肉や魚がなくとも十分に美味しい。
豆乳鍋にももちろん肉類は入っていない。肉や魚がなくても、楽しめる精進料理の夕食で大満足。おひとり様なのにお櫃に2杯半分くらいのごはんが入っていて、残して捨ててしまうことのないように、ごはんをたらふく食べたのでお腹がいっぱい。
プリントされてあるお経をそのまま筆ペンでなぞるだけの作業。説明をお坊さんから受けると、お坊さんはいなくなってしまう。そのまま終わったら、書き上げたものを収めて帰っていいとのこと。ここからは自分との戦い。集中をしながら筆ペンでお経をなぞるだけなんだけれど、途中で集中力が切れて飽きてくるのがわかる。1/3程度書き進めると、残りを仕上げるためには、どれくらい時間がかかるのだろうと計算し始める。完成させるには何時間かかるのだろう?そのような雑念で頭がいっぱいになるとさらに進まない。自分で体験を主体的に申し込んだにも関わらず、罰ゲームを受けているような気分になる。
これではいけないと思ってさらに書き進めると、集中が継続できるようになりリズムが出来てくる。お経の文字が頭の中に入ってきて、スムーズに進むようになってくる。文字がかすれて筆ペンを交換したので、途中から色が濃くなってしまったけれど、ようやく完成。書き終わった時の達成感と、集中力をコントロールできた時のうれしさを感じる。
小さな時計を見ると9時半を過ぎており、書き始めてから1時間半もかかっている。私は集中力が切れてしまうことがある。一つのことを集中して行うことの難しさを学んだ気がする。高野山での修行の旅の一日の最後としては、有意義な体験だった。
もう一度、温泉に浸かり、身体を芯から温めて部屋で眠りにつく。朝から肉や魚を食べず、お酒も飲まずの一日、そして写経体験で自分の集中力のなさを知る。反省すべきは参拝順序を守らずに行き当たりばったりの町歩き。いろいろと学ぶべきものを感じたような気がして、今回、高野山を目的地に選択して良かったような気がする。
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